ミステリアスな時代小説

時代小説作家、山本周五郎に、「その木戸を通って」という中編がある。
不思議小説と呼ばれている。
記憶喪失がテーマだ。
謎めいた出だし、思いがけない展開、そして、なぞはなぞのままに残される。
ラストでは、主人公の哀切な思いが胸に染み入る。

映画化もされているが、観ていない。

周五郎は、たくさん時代小説を残している。
心に染み入る哀しいお話や、笑い転げてしまうお話もある。
現代では古くなった教訓めいた話もあるけれど、いいお話の方が多い。

個人的にも、「その木戸・・・」のほかに、「野分」とか「艶書」とか、中編「柳橋物語」(これは名作だと思う)など、好きな作品がたくさんある。

若い方が読まれても面白い作品があるのではないかと思う。
新潮文庫にたくさん入っているが、ほかの文庫にもある。
お馴染みのない方は、短編や中編から入っていかれたらいいと思う。