名作へのお誘い

 朗読を発表するとき、たいていは、一人一人の読む時間が限られているので、短い小説やエッセイなどを、さらに縮小して読まれる方が多いと思います。私もそうですが、長編小説などには、いいものがたくさんあり、もったいないな、と思ってしまいます。
 そこで、私は、時々、長編小説の冒頭だけ読むことがあります。これには、拒否反応を示される方があります。続きが聴きたくて、欲求不満になられるからだそうです。
 それで、思うのですが、いわゆる「名作」と呼ばれる小説などは、意外に読んでいらっしゃる方が少ないのではないでしょうか?「名作」という箔がついてしまうと、敬遠される向きが多いのでは・・・でも、意外に、読んでみると面白い、という事も、あるように感じます。
 そこで、名作小説の冒頭部だけ読んで、聴き手の方を、その作品世界に、誘う、というのはどうでしょう?
 以前、川端康成の「伊豆の踊子」の最初の方だけ読んだことがありますが、好評でした。
 読みたくなった方だけ、続きを読まれれば、いいのではないかと思います。
 でも、あまり、物語性の強い作品だと、聴き手の方は、ほんとに欲求不満に陥るかもしれません。作品を選ばないと、と思いますけれど。
 古典の冒頭部だけ読むというのもいいと思います。高校時代に勉強した時は、文法に悩まされましたが、そのおかげで、大人になってから読むと、考えたより楽に読めるように思います。
 名作や古典へのお誘い・・・朗読には、そういう役割もあるように思います。