トマト、黒パン、クリームチーズ

須賀敦子さんの「ヴェネチアの宿」を再読しています。

 

若き日の須賀さんの、パリの寄宿舎でのルームメート、ドイツ人女性のカティアの朝食が気になりました。

 

寄宿舎では、朝食も出るのですが、カティアは、近くで開かれる朝市で、好きなものを買って来て食べます。

 

それが、トマト、黒パン、クリームチーズなんです。

 

黒パンにクリームチーズを塗ったら、綺麗でしょうし、美味しそうです。

 

カティアは大した人で、中年になってから、勤め先の学校をやめて、考えたり、読書したりしたいというので、パリにやってきたのです。

 

須賀さんが、夏の間、イタリアに行って勉強したいと話したら、それまで、イタリア語を教えてあげる、ということで、朝食後の一時間を、勉強にあてました。

授業料は、二人一緒で食べる朝食代です。

 

カティアは、優秀な先生でした。

夏に、イタリアの学校に行ったら、須賀さんは、イタリア語は初めてなのに、いきなり中級クラスに入ることができました。

 

ひと月経って、パリに帰ってきたら、もうカティアはいませんでした。

 

それから長い月日が経ち、東京の大学で教えていた須賀さんに、カティアの消息が分かりました。

フィリピンで、学校の校長しているんだそうです。

 

カティアが、日本に来ることになって、一時間だけ、逢うことができました。

 

すっかり、やさしい老女になったカティアは、須賀さんを見て「ちっとも変っていないね」といって、目じりにしわを寄せて笑うのです。

 

食べ物の話に変わりますが、

私は、いつも朝食にはリンゴを食べます。

でも、暑い間は、トマトもいいな、と思いました。

 

今日は、散歩を兼ねて買い物に行きます。

トマトと、黒パンと、クリームチーズを探してみます。