鈴慕(れいぼ)

昨日、4月28日は、「大菩薩峠」の作者、中里介山の命日だったそうです。
1944年(昭和19年)59才で亡くなりました。
未完の大河時代小説「大菩薩峠」の一節を、私は、昔、依頼されて朗読したことがあります。
難解ですが、名文だと思いました。
その一節の、更に一部を、お読みいただけると嬉しいです。

「虚霊」は天上の音(おん)、「虚空」は空中の音、「鈴慕」に至ってはじめて人間の音であります。
行けども行けども地上の旅を行く人間の哀音、そのいずれより来(きた)って、いずれに行くやを知らず、萩のうら風ものさびしく地上を送られ行く人間が、天上の音楽を聞いて、これに合せんとするあこがれが、すなわち「鈴慕」の音色ではないか。
心は高く霊界を慕えども、足は地上を離るること能(あた)わざるそのあこがれ。耳に虚空の妙音の天上にのぼり行くを聞けども、身は片雲(へんうん)の風にさそわれて漂泊に終わる人生の悲哀。

           以下略

ちなみに小説「大菩薩峠」に挑戦してみましたが、あえなく、途中でギブアップしました。難解で長すぎます。
凡人の私には無理でした。