グループホームでの朗読

 しばらく前から、家の近くのグループホームの方たちに朗読の指導をしています。
 月一回、一時間の授業です。今日は、三回目でした。前回から、芥川龍之介の「杜子春」をテキストにしています。一回目は別のテキストでしたが、指導の仕方がまだよく分からず、二回目から取り上げた「杜子春」で、やっと手順をつかめたように思います。
 まず初めに私が、少し読んで、そのあと皆様にいっせいに声を出して読んでいただき、そのあと、お一人ずつ読んでいただきます。
最初は、みなさま、一人で読むのをためらわれるので、私が指名しながら、全員に、お一人で読んでいただきました。すると、読むのを嫌われる方が出てきました。部屋に帰ってしまわれる方もあります。二三人の方だけが、楽しそうに、大きな声で読んでくださいました。
反省しまして、今日からは、ご自分から読みたいといわれる方だけに、一人で読んでいただきました。二区切り、お三人ずつ読んでくださいました。そのほかの方はいっせい読みだけです。
スタッフの方によれば、皆さま、いっせいに声を出して読まれるのが、とてもお好きだそうです。また、これは、脳の活性化に大変有効だとのことです。なんでもすぐ忘れてしまわれるということですので、普通の授業のような指導はできません。今日の指導の仕方が一番よいようです。
 私が模範読みをしているあいだ、みなさま、じっと目を閉じて聴き入ってくださいました。この作品は、きっと以前に聴いたか、読んだかしたことがおありなのではないかと思います。なるほど、昔懐かしいテキストがいいのか、と心の中でうなづきました。でも、生徒さんの中には「最新の文章が読みたい。例えば、又吉直樹の「火花」とか」とおっしゃる方もあります。テキスト選びは、慎重に考えて行きます。
今日は、これからの授業の手順をつかめましたし、生徒さんたち(の一部の方)を、可愛いなと思えました。私は長い間、年老いた両親と暮らしてきましたので、私より年上の方たちと相性がいいようです。
スタッフの方たちの手をお借りして、まあまあいい授業ができたように思いながら、ホームをあとにしました。でも、次にお会いするときは、みなさま、なにも覚えていらっしゃらないのだと思いいたると、切なくなりました。                    2016年4月13日記