父の”にんにく丸熱”

 昨年、98歳で逝った父が、まだ中年だったころ、にんにくに凝ったことがあります。
 大量のにんにくを皮をむいてすりつぶし、丸薬のような形に丸めて、天日に干します。固くなったにんにく丸を、朝晩、薬のように飲んでいました。
 皮むきをさせられた祖母と母は大変でした。指が、やけどをしたようになって皮が剥けました。
 にんにく丸は、廊下に干しますので、家じゅうに、にんにくの匂いが充満していました。
 今、考えると、父は、当時、仕事で大変辛いことがあり、そのためもあって、なにか気持ちのよりどころが欲しかったのではないか、とも思えます。
 にんにくの味は、戦争で中国に行った時、覚えたようです。
父のにんにく丸熱は、数年で冷め、家族は、ほっとしました。にんにく丸熱は冷めても、にんにくは、好きで、市販の焼きにんにくなどを、時々、買って来て食べていました。
父が元気で長生きした秘訣の一つは、にんにくかもしれません。