ある中華料理店にて

 立川駅ビルの中に、北京の家庭料理のお店があります。ここ数年、時々行くようになりました。
 従業員の人たちは、お互い同士、中国語で話しています。厨房からも、中国語の会話が聞こえてきます。時々、口論になることもあり、そういう時は、ちょっと、びっくりします。
 私は、いつもランチを食べます。ランチは、いろいろな種類がありますが、私が、よくいただくのは、①海老のチリソース ②酢豚 ③水餃子 ④サラダ ⑤スープ それに、⑥デザートの杏仁豆腐 のセットです。1050円です。
 少しずつ、小さなお皿に入れてあり、一つのお盆にのせて運ばれてきます。
酢豚は、ほとんど野菜がなく、豚肉だけですが、お味は、甘酸っぱくて美味しいです。
 もともとは、新宿御苑の近くにある同名のお店に、偶然入ったところ、そのお店の海老のチリソースが、辛いものが苦手の私にも、とても美味しくて、家の近くにもチェーン店がないだろうかと検索し、立川にある姉妹店を見つけたのです。
 立川に定期的に通うようになったとき、お店を訪ねて行って、お客様になりました。海老のチリソースは、新宿御苑のお店と同じ味でした。
 私は、いつも、うなぎの寝床のようなこの店の窓際に窓を背にして坐ります。そこから店の入り口の方を眺めると、レジと客席の間に、中国らしいデザインの格子戸があります。この格子戸を見、従業員さんたちの中国語を聴いていると、まるで、中国に来ているような気持になります。
 先日、お店に行った時、背の高い、優しそうな女性の店員さんが、「窓際は暑いでしょう?」と、日本語で声をかけてくれました。
 私が、窓を背にして坐る理由を話しますと、その方は、ぱっと顔を輝かせました。そして、「中国に行かれたことがあるのですか?」と訊いてこられました。
「いえ、ないんですよ。でも、行ってみたいです。昔の北京に行ってみたかった。オリンピックで、ずいぶん変わったでしょうね」と答えますと、その方は、一生懸命になって「だいじょうぶ、昔の北京は、まだ残っていますよ。
世界遺産になったし、王様のお城とか・・・」と言われます。王様のお城とは、紫禁城のことでしょう。TVで胡同(フートン)が壊されていくのを観て、ショックを受けたことは話しませんでした。
 父が80代で中国に旅をし、万里の長城に登ったことなども話しました。万里の長城のてっぺんからの眺めは素晴らしいそうです。
 お勘定を払い、その方の優しい笑顔に見送られて、「また来ますよ」と言って、お店をあとにしました。
 早く、安心して中国に行ける日が来るといいのですが。