タンゴに泣く

私は、気力がなくなった時など、よくタンゴを聴きます。
すると、気持ちに潤いが戻ってきて、元気が出てくるような気がするのです。
このことを生徒さんたちに話して、先日、教室で、タンゴを聴いていただきました。
ルフレッド・ハウゼのコンチネンタル・タンゴです。
一曲目の「碧空」が流れ出したとたん、生徒さんのお一人が、涙を流されました。
そして、思い出を語り始められたのです。
生徒さんたちの中で最高齢の、86歳の方です。
彼女は、子供時代と女学生時代を満州で過ごされました。
そこで、お母様を亡くされたため、彼女が、お母様替わりを務めなければいけませんでした。
当時の楽しみは、社交ダンスしかなく、よく、タンゴを踊られたそうです。
やがて、戦争に負けて、一家で、大変な思いをしながら、内地に帰ってこられました。
終戦後も、いろいろと大変だったようです。
彼女は、私が取り上げたテキストを読みながら、よく泣かれます。
そして、思い出話を語られます。
実をいうと、彼女は、数年前に、脳こうそくを経験され、軽い認知症になられました。
ご主人が、しっかりした方で、奥様に、昔から続けている朗読とコーラスは続けるようにと言われたそうで、がんばって通ってこられます。
テキストを読んで、泣き、昔の思い出話を語られるのは、彼女の認知症の進行を遅らせるのに、役立っているかもしれないと思います。