入院している父のところへ行ってきました。父と一緒に

 入院している父のところへ行ってきました。
すやすや眠っている父を起こさないで帰ろうかと思っていると、ちょうど通りかかった看護師さんが、父を起こしてくださいました。
父は機嫌がよく、元気でした。
お腹がすいたというので、九州のお菓子、黒棒をあげました。
黒砂糖を使ったお菓子、”黒棒”は、私たち一家の好物です。
私たちは、以前、九州に住んでいたことがあります。
父は、「家に帰ったら、髪を伸ばそうかと思ってるんだ」と言ったり、「この病院のことを知りたい、病院周辺の略図は、ないだろうか?」などと言います。
病院のパンフレットに、周辺略図がありましたので、父にあげました。
(父は、救急車で、病院に運ばれたのです)
「美味しい」と、気持ちよさそうな父は、そのあと、例によって、「〇〇の部屋はちらっかてるんじゃないだろうね」と、片付けが苦手な私に向かって、お説教を始めました。
そこで、私は、すかさず、「私のような人もいるのよ、聴いて」と言って、いつものように、本の朗読を始めました。
岡田光世さんの「ニューヨークの魔法」というエッセイ集の中の、短いお話です。
岡田さんは、長年、ニューヨークで暮らしている、女性ライターで、ご自分が経験されたことを書いていらっしゃいます。
「クローゼットご開帳」という一篇。
岡田さんの、ものすごく散らかった部屋に、泥棒が入りました。
そのあとは、いったい、どうなったでしょう・・・?
父は、心から、愉快そうに笑いました。
もう一つ、とせがまれて、産経新聞関西版の読者投稿欄「夕焼けエッセー」の投稿作品より、「まりッジブルー」(作者は、若い女性です)を読みました。
これも、コミカルで、明るいお話です。
これにも、愉快そうに笑った父は、「これから、毎日、笑えるお話を聴かせてよ」と言いました。
途中で、隣のベッドの患者さんの奥さんが、お見舞いに来られましたが、彼女も、そして、通りかかった看護師さんも、一緒に、聴いてくださいました。
朗読が終わったあと、看護師さんや、奥さんが、口々に、感想を言ってくださいます。
父も、一緒に、楽しそうに歓談しました。
これから、お昼を食べる、という父をあとに残して、帰ってきました。
今日、内科のお医者様と、外科のお医者様が相談して、父の今後のことが決まります。
手術しないで、このままにしておくと、やがて苦しむことになるでしょう。
でも、もうすぐ98歳になる父が、手術に耐えられるでしょうか・・・
お医者様が、手術を決めても、家族や、そして、最終的には、父本人が同意しなければ、行えません。
父の気持ちは、揺れ動くでしょう。
お医者様からのお話は、明日になるそうです。
父が、平安な気持ちでいられるのは、今日が最後かもしれません。
父を起こしてくださった看護師さんに感謝しなければいけません。
それに、ほんの一時でも、父と私に、幸せな時間を与えてくださった神様・・・そして、私に、朗読を与えてくださった神様に、感謝いたします。

☆父が最後に楽しい日々を過ごした小金井市の聖ヨハネ会桜町病院のスタッフの方々に感謝の言葉を贈ります。