「ブラウン神父」 に再会

 今朝の朝日新聞天声人語の欄の冒頭に、名探偵「ブラウン神父」が登場しました。
今、世間を騒がせている事件について書いてある文章に出てくるのですが、この、G・K・チェスタトン作の推理小説が、昔、大好きでした。

とくに、ここで取り上げられた「青い十字架」というお話が、記憶に強く残っています。
ノーフォーク・ダンプリングという料理に使うお団子(?)に似ているという、一見さえない、田舎の聖職者、ブラウン神父(実は、推理の名手です)が、大泥棒、フランボウを改心させるお話です。
星降る夜のハムステッド・ヒースが、改心の舞台になっています。
これを読んで、ハムステッド・ヒースに憧れました。
その後、イギリスに行く機会がありましたが、残念ながら、ハムステッド・ヒースには行けませんでした。

名探偵「ブラウン神父」シリーズには、推理小説を読むようになってからまだ、日の浅い、当時の私には、新鮮に思える言葉が、いくつも出てきました。
例えば、「木の葉を隠すなら、森の中へ、では、死体を隠すには・・・?」とか、
「見えない人とは、どういう人か?」などです。
奇抜なアイデアで、最初は驚きますが、最後に、納得させられます。

また、私は、この小説の色彩描写にもひきつけられました。
色が目に見えるようなのです。
ことに、空の描写が独特です。

親友になったフランボウが住んでいる、スペインの城を、神父が訪ねて行くシーンの、夕空の描写などが、印象に残っています。

私の少女時代には、今のように、簡単に、海外に行けませんでしたから、ヨーロッパに行きたくてたまらなかった私は、「ブラウン神父」などの、イギリスやヨーロッパが舞台になっている翻訳物を、憧れに 胸を焦がしながら、読んだものです。

天声人語」のおかげで、思いがけず、懐かしい人に再会することができました。